終わりは始まり…


「……ん?」


夜も更けた頃。
星を眺めながら一人の青年は誰もいない静かな公園を歩いていた。
怪しく光る金色の目を覆い隠すように長く伸びた前髪が、歩く度にチラチラとうっとおしい。
その事を考えながら歩いていると、ふとその目に真っ赤な色が飛び込んでくるように入ってきた。


「オスカーじゃねぇ〜か…?」


オスカーと呼ばれ、ベンチに座りながら項垂れていた顔をゆっくりと上げる青年。
スラっと伸びた四肢はまるで、野生の生き物のように逞しく綺麗で長い。
手には缶ビールを持ち、飲み始めてから長い時間が経っているのか、顔がほのかにピンク色だった。
回りにも飲み干した空き缶が散乱している。


「よぉ……アリオスか…」


オスカーは軽く返事を返し、また視線を下へと落とす。
アリオスと呼ばれた白髪の青年は、オスカーの隣にゆっくり腰を下ろした。


「ビール?……何だ、らしくねぇ〜な…」
「俺だってたまには飲むさ……」
「ワインを片手に女と飲むのが当たり前って感じがするけどな……」
「……………」


あくまで、冗談めかして言うアリオスの傍らでオスカーの目が暗くなる。
そのおかしな沈黙に、さすがのアリオスもオスカーの様子がおかしい事に気がついた。
オスカーは遠くを見たまま、その視線を動かそうとしない。
アリオスはその悩み深き目を覗き込むと、その妙な色っぽさに心が動くのを感じた。


「(すげぇ〜綺麗な目をしているのにな……)」


アリオスは自分の目…この金色の目が嫌いだった。
払いきったはずの邪念を映し出すかのようなこの金色の目が……
この瞳によって狂わされた人生…その目がアリオスには今でも苦悩を与え続けているのだった。

それなのに、オスカーの瞳は違った。
真っ直ぐに真実を見つめる事の出来る様な綺麗な目。
しかし近くで見る今日のソレは、少し悲しみに潤んでいるさまに色っぽさを感じ喉が鳴る。
その悲しみを取り除いて、まっすぐなその視線に自分を写したら少しは自分も変わって見えるのだろうか。


「………オス、…アリオス!!」


突然オスカーに耳元でがなられ、アリオスは肩をビクつかせる。


「……ど〜した?」
「な、何でもね〜よ……」
「おかしな奴…」


アリオスは、短く切るオスカーの言葉にあからさまにあたられているのを感じた。


「おかしいのはアンタの方だぜ……」
「…………そうだろうな…」


オスカーは軽く笑って返すが、その中にたくさんの辛い気持ちが含まれているのをアリオスにはハッキリと感じる。


「なぁ…何があったんだ…?」
「…………」


オスカーはビールの缶を思いっきり煽るが中味がもうなくなっていたようで、小さく舌を鳴らした。
中味の入っていない缶を近くに設置されているゴミ箱に投げ入れるが、狙い定まらずに淵に当たり近くい落ちる。
きっと回りに落ちているのも、そんな調子で落ちているのだろう。
オスカーは気にする事もなくアリオスの方に向き直りゆっくり話しをし始めた。


「ちょっとな………嫌な事ばっかり続くもんでな……」


“嫌な事”……具体的内容を話してもらえなかったアリオスは、少なくとも良い気分にはなれなかった。
その真っ直ぐな瞳を汚している理由が、嫌な事だけで済まされるなんて納得がいかなかったからだ。


「それで……弱音を吐いてたって訳か?」
「別に……そんなわけじゃ…」
「そんな顔して、弱音以外の何があるってんだよっ…」


何故かムキになって怒鳴ってしまってから、アリオスはハっとなって気がつく。
オスカーに至っては、何故アリオスが怒っているのかがさっぱり分からずにいた。


「…………」
「…………」


重い沈黙が二人を異様なまでに包んでいく。
気まずい雰囲気の中、先に口を開いたのはオスカーだった。


「……俺の生きる意味って何だろうな……」
「はっ!?」


あまりに予想外の言葉に、アリオスはすっとんきょうな声を上げて驚いてしまった。


「…アンタ、守護聖だろ?」
「サクリアを送る……それが俺の宿命…それは分かってる!!」
「………」


あまりに悲痛な面持ちで話しをするオスカーに、アリオスはかける声を失ってしまう。


「俺は……他に何も出来ないのか………力を送るだけしか…」


あまりに感情の入り過ぎた何かの対象を、アリオスは見出す事が出来た。
それと同時に、何故か苛立ちを覚えたのを感じる。
きっと守りたい何かがあったのだろうと思った。


「黙って見ている事しか出来ない……それなのに、大きな顔をしてココにいる事も……全てが気に入らな……!?」


感情のあまりつい言葉が止まらなくなってしまったが、突如言葉が止まらざるを得ない状況にオスカーは驚いた。
アリオスが、オスカーの胸ぐらを掴んだまま鋭い視線を送っていたからだ。
オスカーも最初は驚いたもののアリオスの行動にだんだん腹が立ち、負けじと睨み返す。


「酔っ払いの戯言なんて、聞きたいわけじゃねぇ〜よ……」
「何だと…!?」
「あんたにはあんたにしか出来ない事がある……それを精一杯やればいいだけだろ……」
「お前に、俺の気持ちが分かるのか…!」
「ああ、わからねぇ〜な…」


静かな公園の中、二人の言い争う声だけが響いている。
どっちともつかない言いように、お互いにだんだんと空しさを感じ始めた。
自然と掴み合った手を離し、そっぽを向いてベンチに座り直す。


「くだらねぇ〜…」
「本当……そうだな…」


オスカーがまたビールを煽りながら、缶の中味を一気に飲み干す。
無茶な飲み方だとは思ったが、今夜はこの弱りきった生き物の傍にいてやろう…そんな気分になった。


「………付き合うぜ…」
「は…?」
「酒……俺にもよこせ…」


アリオスはそう言ってオスカーから視線を離し、ベンチにと乗っているたくさんのビールの缶から一つ拝借した。


「ずいぶん飲んでたんだな…」
「勝手に飲むなよ…」


そうは言いながらも、心の底ではちょっと嬉しかったのかもしれない。
オスカーは小さく吹き出すように笑った。
アリオスはそんなオスカーを横目でチラリと見ると、心の中の氷が溶けたように安心する事が出来たのだ。






「……っ…飲みすぎなんだよ…」
「ぁ〜〜……煩い、……………」
「おいっ、まだ寝るなよ……もうすぐで着く……おいっ!」


ぐでぐでに酔ってしまったオスカーの腕をアリオスは肩に担ぎ、館までの道のりを二人で歩いていた。
なかなか自分の力で歩こうとしないオスカーにイラつきを感じながらも、ちゃんと運んでやっている自分にアリオスは以外性を感じる。


「無茶しやがって…まったく…」
「俺のおごりなんだから…っ…文句言うな…」
「…はいはい…ほら、着いたぜ…」


ドアのノブに手をかけゆっくりと回すが、妙に重く感じるのは酔っている所為なのかと思い少し可笑しくなった。
寝室はどこなのかと聞き、そこまで連れていく。
本当ならその辺にでもほっぽっておけば良い事で、こんなに親切にする義理はないのかもしれない。
でも、今日は気分が良いのか……そういう風に考えておくのがアリオスには一番楽だった。
寝室のドアを開けると冷え切った部屋の空気が異様に寂しく感じ、身を震わせる。
どことなくオスカーとは対照的なこの空間が、本当のオスカーの心を表しているかのようで寂しささえ感じた。


「寝るか?」
「ああ……もう、寝る……」
「ほらっ………っっ!?」


オスカーを寝室の真ん中にあるベッドに運ぶと、そのまま崩れるようにベッドに横になる。
しかし、オスカーがアリオスを離さなかったおかげで、アリオスは引っ張られるようにされオスカーの上に危うく倒れ込む所だった。
オスカーは自分でも分かっているのか否か、熱い視線をアリオスに向けている。
アリオスは溜息をつくと、オスカーの耳元で囁く。


「酔っ払った勢いか?……俺にはそんな趣味はねぇ〜…」
「冷たい奴だな……」


誘っているオスカーの目に吸い込まれるように魅入ってしまう。
本当に綺麗な目をしているのに、辛い気持ちがそれを邪魔して歪んだ自分が映っているのが見える。
もっと心から自分を映してして欲しくて……


「そんな趣味はないが…………」
「……アリオス」


急にアリオスが真剣な眼差しで自分を見ている事にオスカーは気がついた。
隠れていた右の目が近くで露になり、金色の目がオスカーの動きを縛るような感じを醸し出す。
ゾクリとするほどの視線に耐えられなくなり目を逸らすと、アリオスはオスカーの顎を掴み再び自分の方を向かせる。


「アンタに興味は……ある…カナ…」
「……っ……んっ」


アリオスは、自分の口でオスカーのソレを塞ぐと同時に舌をすばやく滑り込ませた。
淫らに動く舌に翻弄され、オスカーの頭の中は真っ白になる。


「っ……んんぅっ……はっ…」
「逃げるなよ…」
「何だよ…急にっ……」
「アンタが誘ったんだろ……文句言うなよ…」


そう言ってアリオスは、オスカーの服の裾から手を滑り込ませる。
胸元を探りながら再び唇を塞ぎ、両方を丹念に弄った。
オスカーの体が少しビクつくのを見計らって舌を吸い上げると、更に背中を撓らせて身体が喜んでいるのを見て分かる事が出来た。
もうすでに硬くなった果実を摘んだり弾いたりして、反応を楽しんだ。


「っ…っ…く…」
「へぇ〜、もう感じた?」
「バカ…言うな…っ……ぅぁっ!?」


突然前触れもなくアリオスの手がオスカーの昂ぶったモノをズボンの布越しに触った。
もう張り詰めたソコは、触れただけで限界を感じ始めている。


「離っ…離せよっ…」
「良いから…酔っ払いは黙ってろ……」
「……っ……」


信じられないほど感じていた。
こんな気持ちは初めてだった…今までとは全然違う感覚に、オスカーは身を任せたいとも思い始めていた。


「最初からそうしていれば良いんだよ…」
「煩い……っ…」
「素直になれよ…」


弱った上に酔った人間を高みに昇らせるのは簡単だった。
ズボン越しに触っているだけなのに、オスカーはあっけなく果ててしまったのだから。


「早い……もう少し我慢出来ないのかよ…」
「………良いから、…脱がせろよ…」
「注文の多い奴だな…」


アリオスは、中途半端に脱がされているオスカーの衣服を完全に取り払った。
露になったオスカーの鍛えられた身体は、すごく野生的で綺麗な身体をしている。
月の光がさらにその綺麗な身体に色取りを盛り付けてるようで、アリオスは誘われている様に見えて仕方がなかった。


「俺のも、しろよ…」
「……」


オスカーは無言でアリオスの前に屈み、アリオスの昂ぶったモノを取り出した。
口を開け、舌を出してゆっくりと舐める。
舌を上手く使ってアリオスの感じる所を探るようになぞったりした。


「…っ………さすがだよな……どうせ、他の奴のもした事あるんだろう?」
「……んっ………っ……」


オスカーは、アリオスのを咥えたまま睨むような視線だけを送った。
そして、仕返しとばかりに激しく扱きながら先を丹念に舐め上げる。


「っ…おいっ…飛ばし過ぎじゃ…」
「んむっ………ぅ…、はっ…良いから、早くイけよ…」
「ちゃんと全部飲み込めよ…」


再びオスカーの口内に含まれると、奥まで咥え込まれ息が上がる。
自分も酔っているからか、いつもより淫らに気持ちに支配され限界が近づいてくるのが分かった。
オスカーの赤い髪の中に指を滑り込ませ、頭をしっかりと掴む。
そして、自らも腰を使って果てる準備態勢に入った。


「いいか…イクぜ…」
「っ……っぅん……」
「はっ……っ…くっ…!!」


アリオスはオスカーの頭を両手で固定させると、己の欲望を全て吐き出す。
オスカーは口内に流れてくるものを全て飲み干し、ゆっくりと顔を上げる。
果てたばかりのアリオスに近寄り、自然と口付けを交わす。


「苦い……」
「お前のだろ……」


まだ息の乱れる中、アリオスはオスカーを再びベッドに組み敷くようにして押し倒した。


「次は、アンタの番……」


そう言って、逃がさないかのようにまた唇を合わせる。
視線を合わせアリオスは、自分がオスカーの目に映っているのを見つけた。
オスカーの目に映る自分だけの姿が、とても綺麗に映っているのを見て今のオスカーには自分だけが全てだと感じ、心の中が熱くなっていく。


「俺だけを感じていろ…」


オスカーはアリオスの背中に腕を回し、全てを捧げる覚悟と共に身を任せた。






「っ…頭が……痛い…」
「お目覚めか……酔っ払いさん」
「あ、アリオス…」


窓からは朝日が差し込んでいるのを見て、もう朝なのだと気がついた。
いつ寝たのかも覚えていない、ココがどこなのかも一瞬わからなかった位だ。


「あぁ…俺…………迷惑かけたな…」
「別に…」


オスカーは、昨日の出来事を思い出すのに少し時間がかかりながらもおぼろげに思い出した。
そして、少なからずも恥ずかしさを覚える。
少しの沈黙があった後に、口を開いたのはオスカーだった。


「お前のその目……その金色の目……」
「……?」
「嫌いじゃない………だから、不安になる必要はない……」
「っ…!?」


アリオスは、自分の気持ちが見透かされたようで驚いた。
昨日の間にオスカーは感じた……アリオスの自分の目に対する不安な気持ちを。


「そんな目をするな……お前の本当の気持ち、分かるから…」


アリオスは、何だか柄にもなく嬉しくなってしまいオスカーに近寄り軽くキスをした。
触れるだけの軽いもので、すぐに離れていってしまう。
オスカーは、少しだけもの足りない気がしてはっと気がつく。


「(な、何考えて…)」
「俺も…アンタの目……好きだ…」


アリオスは、オスカーが同じ事を考えていた事に可笑しさを感じた。


「やっと、綺麗な目になった……昨日までのアンタの目…正直死んでたぜ…」
「おかげ様か……」


そう言うとアリオスは背中をオスカーに向けて、部屋を出る為にドアに手をかける。


「また…な…」
「…………」


そう言うと、アリオスはオスカーの館を出て行く。
部屋に残されたオスカーは、可笑しくて一人で小さく笑った。





オスカーと別れた後、アリオスは今までの事を思い出しながら後悔していた。


「(やめておけば良かった………)」


オスカーの声や仕草が離れなかった。
いつもなら、その場のセックスでの気持ちなんて軽く払えるのに。


「(ヤベェかもな…)」


オスカーと早く別れていなかったら、思わず自分のものにしたいという気持ちに支配されそうになっていた。
自分でもこんな気持ちは初めてだと感じる。
溜息をつくと、振り返る事もなくオスカーの館からもっとも離れた場所を目指して歩き続けた。

fin〜




バックにテンペスト…(つづり分かりません…)
そんな気分でやりました…アハハ。
ってか、オス受け同盟記念の勢いで書き始めたわりには、こだわり過ぎてなかなか終わりませんでした…
自分でも驚くくらいがんばってしまいましたv

これの提案はyutakaさんから頂きましたv
yutakaさんの気に召して頂ければ幸いです☆

でも、革命ですv
すっごい楽しかったですねv
今までは、かわいい子の受けしか書いたことなかったもので(死)
何か
男同士のぶつかり合いをテーマにしてがんばってみたのですが…ちゃんとなってるかな?
やっぱりシリアスは書いてて楽しいのですが、何故かオチを付けたくなった…アホ

結構話的には気に入ってたりしますv
特に最後の閉めですか…こういうの好きなので…好きだから離れるべぇ〜みたいな(言い方変だよ)
まぁ、これからもオス受け同盟提案賛同者として、イロイロ書いてみたいとは思ってますv
はぁ〜革命が起きましたねぇ〜v




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