『正午-mahiru-』



太陽が天の高みを通過してゆく。
今日一番の高さを、おそらく通過しているだろうとリュミエールは時計を見遣りながら思う。
そして、腕の中の男もまた、己の高みへ今まさにさしかかろうとしている。
 「…リュ、ミエール…はぁ…っ…」
 「ダメですよ、オスカー…まだです。」
よじれる体を優しく抱いてやりながら微笑む。
ぎしぎしと、二人の男の重みに耐えて椅子が鳴いた。
そして、靴下まで全て着衣を奪った男が椅子に全ての体重を預けて鳴く。
うっとりとする。
背筋に寒気が走る、思わずこのまま絞め殺してやりたくなるような妖艶な鳴き声だ。
 「あなたはかわいい人ですね…そんなにしがみついては苦しいですよ?」
 「だっれが…あぁっ!」
強がる瞳を試すように腰を奥深くまで進めると、
オスカーが体躯を仰け反らせ赤い髪がばさり、と音を立てた。
素晴らしい。
今日もこの感度は完璧だ。会議室で戯れに抱くのはもったいないが、
時間と人目という二重の制限があるからこそ、この遊戯はより深い意味を持つ。
容赦なくオスカーを追い立てながら、悟られないようにもう一度壁の時計を見遣る。
そろそろ、仕上げの時間だ。
 「オスカー、もっと気持ちよくなりたいでしょう?」
わざと甘ったるい声で言う。寝つきの悪い子供をあやすような声で。
 「誰がお前なんかにイカされるものか…っ!」
そしてそれはオスカーのプライドに障る。計画通りだ。
アイスブルーの瞳が今にも赤く変化しそうな程燃えている。
 「体の声をお聞きなさい、正直に。あなたはもうもたない。…わかってるくせに、」
そういいながらオスカーの腰を抱え上げ、そのまま持ち上げて机の上に載せてしまう。
一瞬の出来事に驚いているオスカーを机の上に引き倒し、再度体を繋ぐのはたやすい。
そして、こうした方がより奥深くオスカーを貪れる事をもちろんリュミエールは知っている。
 「ずっとこうされたくて疼いていたでしょう?こんなに…ほら、」
 「あ…ああっ…っく…うぅっ…!」
容赦なく攻め立てる腰の動きに、オスカーが声を漏らすまいと歯を食いしばる。
その唇から流れる血はどれほど美しいだろうと思いながら、
リュミエールは絶頂へとオスカーを巻き添えにした。


 「まだ怒ってるんですか?」
 「当たり前だ!」
 「嘘吐きですね。気絶するほどよかったくせに」
 「ちがう!ちょっと疲れたから一瞬寝ただけだ!」
オスカーが昇天のきわに机の上に放した白い汁液を上品なシルクのハンカチで丁寧に拭き取りながら、
リュミエールはおおげさにため息をついてみせる。
 「こんなに会社の器物を汚して、悪い人ですね。」
 その言葉にわなわなと肩を震わせながらオスカーが振り向く。
怒りのままにネクタイの端をぎっちり握り締めている様子が見えた。
 「誰のせいだ!」
 「あああ。この机、買ったらいくらするかご存知ですか?」
オスカーは口ごもった。同期とはいえ、
さっさと経理主任に昇格してしまったリュミエールは社内のことは何でも知っている。
 「知らん!営業には机がいくらかなんて関係ないからな!」
きっぱり言い捨て、泣く子も騙す営業マンとしての威厳を取り戻そうと
キュッときつくネクタイを締め上げた時、視界の端でリュミエールが優美に口元に笑みを湛えた。
嫌な予感が、オスカーの胸を駆け上った。
 「何、ニヤニヤしてるんだよ。午後からここ会議で使うんだろう? 早く戻れよ。」
 「…そうでした。大変、すぐに戻らないと…ねぇオスカー、」
 謎掛けのように語尾を妖艶に上げたリュミエールをオスカーはイライラしながら睨んだ。
 「何だ、早く言え。」
 リュミエールは先程オスカーを座らせて抱いていた椅子を指差す。
 「あの椅子、次の会議でジュリアスが座るんですよ。」
 「……何?!」
突然自分の上司の名前が挙がったことと、自分が乱れた椅子を差されたことに一瞬頭が白くなる。
 「あなたが腰を振って私を欲しがったあの席に、あなたの憧れの営業部長殿が座るんです。
  あなたの痴態など想像もせずに。」
カァッ、とオスカーの頭に血が上る。
尊敬する上司には、間違っても見られたくない姿だ。
リュミエールはそれを見て、満足そうに微笑み、
長く美しい水色の髪をひとまとめにして背に流して立ち上がった。
先程までの情事の気配など片鱗も残っていない。
 「さて、私はその会議の仕度がありますからお先に失礼します。
  ジュリアス部長の紅茶は淹れるのに時間がかかるんです。」
 「お前、まさかこのことジュリアス様に…」
 「言うはずないでしょう? こんな美味しい密会のことは。」
午後の始まりのチャイムが鳴る。もう戻らなければならない。
ドアノブに手をかけたリュミエールがそうだ、と呟いてオスカーを振り返る。
 「大丈夫、あなたのあの香りはちゃんと会議の前に消臭しておきますから。でも、」
 「…何か企んでるなら早く言え。」
 「会議の間中、私はジュリアスの椅子に乱れるあなたの姿態を重ねて見られる訳です。
  …あなたのおかげで午後も楽しい時間が過ごせそうです。
  ありがとう、オスカー。では、ごきげんよう。」
ひらひらと手を振ってリュミエールは会議室から消えた。
あまりのことにクラクラする頭を抱えながら、ジュリアスが座るという椅子に
自分の痕跡が残っていないか一通り確認してからオスカーは会議室を後にした。
 「今日は絶対直帰してやる…」
打ちひしがれている男の背に、優しく聖地の午後の光が差したが、
オスカーの心の中は今まさにブリザードが吹き荒れていた。



了。




浅海夕夏里様から誕生日プレゼントに素敵なお話を頂きました!!vv
きゃ〜〜〜っありがとう〜〜〜!!(><)ゆかり姉さんっ!!
お相手はリュミエール様ですのね…vv余裕のある漢、リュミエール…きゃ〜かっこい〜っvvv(><)
更に我の大好物のリーマンオフィスラヴ……vvv
真昼の情事vに戸惑う赤毛ちゃんはさぞ愛らしいことでしょう…!!
会議室バンザーイ!!揺れるネクタイバンザーーーイ!!!!
もうねっもうねっ愛あるリュミさんの鬼畜っぷりが最っ高……vvv(悦!)
リュミちゃんが一枚上手でオスカーちゃんが強がっちゃってvでもそんなオレ達仲良しですvな
僕好みの力関係の(笑)ありとあらゆる意味でギリギリラヴvなお二人だったので大・興・奮☆
真っ昼間の会議室でのギリギリの密会………v(萌〜〜〜!!!!)
ええもう、さぞ美味しかった事でしょう!
上司ジュリアス様の絡めっぷりといい!最後のリュミさんの捨て台詞とかっv
赤毛の哀愁ただようBackとか!同期の桜でリュミさんのが出世してたりとか!(笑)
萌えポイントが大量な艶やかなリュミオスお宝ストーリーをどうもありがとう…!!!
その後の会議中のリュミさんとかめっさ気になる〜〜!(><) そんで後日会議の報告とかしちゃうのかしらv
from yutaka

先日ちろっと上司ジュリアス編とか新米営業マン、ランディ編とか書いてみたいかも…v
とおっしゃっていたのをわたくしは覚えておりますよ…?フフフ…vええもう是非…!v
そして真昼のオスカーは大変美味しく頂くことができまして至福の時を過ごさせて頂きましたが、
第二段、第三段もわたくし大歓迎でございます…v
まったくあの扇情的な赤毛さんは人を欲張りにさせますね…困ったものです(微笑)
fromウラ聖地在住水男(笑)


2006,2,13up!






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