ワタシのお気に入り☆

〜その時オリヴィエは〜




 「下に遊びに行かない?」
そう切り出したのは私。アイツがお偉いさんに面倒を押し付けられてへこんでいたから、いつものようにお忍びで気晴らしに行こうと誘った。慣れたもので、あいつは二つ返事でOKした。

 なのに当日になって、何でこう、服が決まらないかなあ。
どんな服を着たって似合うし着こなせるけど、今日の気分にぴったりの衣装が見つからない。三つ目のクロゼットに手を掛けた時、衣装部屋の扉を叩く音がした。
「誰?」
「俺だ。あんまり遅いから迎えに来てやったぞ。お前の屋敷には時計がないのか」
扉の向こうで苛立ってるのが分かる。ああ、もうそんな時間だっけ。
 私が扉を開けると、ふてくされた顔をしたオスカーが立っていた。
「ごめんごめん。ちょっと服が決まらなくてさ」
苦笑いの私と部屋の奥一面に散らかった衣装を交互に見て、オスカーは呆れたように肩を竦めた。
「何を着たってケバいのには変わらんと思うがな」
「失礼なやつだね。もう少し時間がかかるから、向こうで座っといで」
しっしっと手をひらつかせてオスカーを隣の部屋に追いやった後、また私はクロゼットを開けたり閉めたりして、服を選び始めた。

 ドットのシャツも、グランジっぽい巻スカートも、タイトなブーツカットも、どれも私のお気に入り。だけど何故か今日は、どれも違う気がする。
「参ったねえ…」
ぼやきながら衣装をかき分けていると、隙間から目を引く色が顔を出した。
「あら、こんなの持ってたっけ」
素敵な、夜色のシャツ。同色の絹糸で細かな刺繍を施した上品な仕立ては、手に取ると思わず恍惚とする一級品。何で忘れてたんだろう。
 思わぬ掘り出し物に心躍らせて、すぐに鏡の前で合わせてみた。
 悪くない。悪くないけど、何かビミョーに違う気がする。ああそうだ、このシャツは、髪が短い頃に買ったんだ。
「だから最近着なかったんだ…ああもう、残念!」
せっかく決まったと思ったのにまた振り出し。私はがっくりと肩を落としてうなだれた。
 お忍びの夜会にはぴったりの、セクシーな淡い光沢。着たいけれど、髪を切るのも気が引ける。何かいい手はないかしら。

 手にしたシャツを見つめて立ち尽くす私の背中に、呆れたような声が掛けられた。
「まだ決まらないのか。いい加減にしないと置いて行くぞ」
扉に手を掛けたオスカーは、待ち疲れた様子でこちらを見ている。その姿は、私の中に一筋のひらめきをもたらした。
「…ちょっとオスカー、こっち来てごらん」
「何だニヤニヤして気味の悪い…」
ぶつぶつ言いながら部屋の奥に進み来たオスカーを捕まえて、背中に回る。
「お、おい何を…!」
「いいから黙って、ほら、そっちに立つの!」
鏡の前に連れきたオスカーの胸に、持っていたシャツをかざした。
「思った通り!あんた似合うじゃない!」
「はあ?」
いまいち状況が飲み込めていないオスカーを他所に、私は嬉しくて小躍りしそうな気分だった。
私が着られないんだったら、こいつに着せちゃおう。私くらい勉強家になると、自分好みの服を他人が着てるのを見るのもとっても参考になるし。まあ単純に、好奇心が旺盛だからってのもあるけど。
「ねえオスカー、これすごく合ってるよ。これ来て行きなさい。うん、それがイイ!そうと決まればほら、そんなダサい服脱いで!」
私は背中からするりと手を廻して、オスカーの着ている半袖シャツのボタンを外しにかかった。
「何だいきなり!あとダサいってのはどういう…おいこら!離れろ!脱がすな!」
慌てふためくオスカーの声なんかもちろん私は気にしない。こんな素敵な衣装が私より似合うなんて生意気だもの。こうなったら上から下まで私好みの衣装に変えてやろうかしら。
「動いてもムダだよ。私ってば器用だからさ、こんなボタンあっという間なんだよねー」
台詞よりも早く、私の指はするすると動いてボタンを全部外してしまった。そのまま肩から背中に襟を引き倒せば、通したままの袖が枷になって、オスカーは身動きが取れなくなる。
「ほーら、大人しくしなさい…あら、何変な顔してるの」
突然の私の行動に動揺したのか、常は相手を射抜くほどの強さを持つアイスブルーが一瞬揺れた。けれどすぐに光を取り戻し、私の方を向いて、きっ!と睨んだ。
「変も何も、突然脱がされりゃ誰だって驚くだろうが!」
オスカーはかすかに頬を朱に染めて、目を真ん丸にして怒っている。私にとっては、それは意外な反応だった。
「へえー。あんたってば女の子脱がすのは平気でも自分が脱がされるのはビビっちゃうんだ」
「ばっ馬鹿言うな!誰がビビってなんか…おい何だその手は!」

 思いもよらない反応に、私のイタズラ心がむずむずと騒ぎ出した。
「…自慢の鍛え上げたカラダでも、やっぱ見られると恥ずかしいんだ?」
耳元に囁くように語りかけながら、私は胸の中央のくぼみを指先でなぞった。触れるか触れないかの微妙な力加減で、すうっと下へ撫で下ろす。
「な、な、何をしてるんだお前は!止さないかこの馬鹿!」
朱をさらに深くして、オスカーがじたばたともがく。
「おや、あんまり動くと…シャツが破けちゃうよ?そうしたら屋敷まで私のシャツを着て帰るかい?私はそれでもいいけどね…ふふっ」
いつも偉そうな事を言ってるくせに、ちょっと隙をついてやると意外なほど脆い。まったく、馬鹿はどっちなのさ、こんなカワイイ反応しておいて。

「…ねえオスカー、下に行くよりさあ…違う事して遊ぼうか……?」
ちょっと低めの声を耳元に流し込んでやると、さすがに身の危険を感じたのか、赤く染まっていたオスカーの頬はみるみる青ざめて、凍り付いたように体を固くした。そして慌てて私の腕を振払うと、シャツの前を片手でしっかりと合わせ持った。
「そっ…それだけはご免だ!俺は帰る!」
半分裏返った声で叫んで、そのままオスカーは振り返る事なく部屋を出て行ってしまった。手足が妙にぎくしゃくしているのが面白かったけど、言うと余計に怒られそうなので、私は黙って見送った。

 私はまだ、"何をするか"は言ってないのにね。意識してるのバレバレじゃない。今どき生娘だってそんなウブな反応しないと思うけど。
「ちょっとからかっただけなのにねえ…?」
一人になった部屋の中で、私は思わず吹き出してしまった。


 今度は本気で、イケナイ事してやろうか、と考えながら。

fin







あわわ。何か煮え切らない感じですみません。でも初っぱなから濃いのはかけませんでした。いずれはユタ君に身悶えてもらえるようなの目指しますので、今回はお触りだけよってことで(笑)



素敵なお話どうもありがとう!NAPちゃん!!
オットコ前やわ〜vエロイわ〜vヴィエ様!!もうガンガンイタズラしちゃってvv
でも水様がだまっちゃいないか…?(笑)
ヴィエ様のヤラシ〜イ手付きにすでに身悶えてます(笑)
実は夢様vs?水様の序章だったりするんだよね〜?♪続編も楽しみにしてますぞっvv
どうもありがとう〜vv from yutaka



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