春の嵐
今日は日の曜日。
オスカー様との剣の早朝稽古をしてもらってる所だ。
サラリ…とその炎のような赤毛が揺れ、早朝とはいえ、身体を動かしてるせいもあってじんわりと額に汗が浮かんでいる。朝の光に当たってキラリと光る。
『まっまぶしいっまぶしすぎますっオスカー様!!!』
ここんとこバタついていて久ぶりの稽古に浮かれていたランディだった… 何よりうれしいのは執務服に身を固めていない、動きやすいラフなかっこのオスカー様だ! オスカーは執務服ではインナーはタートルネックが多く、首元はいつもかっちりガードされているのだが、今日は違う。胸元ギリギリまでボタンは外されている…
動く度に、話す度に動く筋肉の旋律に何とも言えない感情が芽生えてきそうでついつい目が向かってしまう…
…とそんな時、目の前に鋭い剣のきっさきが自分に向かって延びている。
「何を余所見してるんだ、ランディ!真剣勝負なんだぜ?こんなことじゃ真のナイトになるのは先が遠いな。」
するどい眼差しでアイスブルーの瞳がオレを見据えている…
っといけない!オスカー様は真剣に剣の稽古をして下さっているというのに…
「…!すみません、オスカー様…」しゅんとなって言ったオレに
「まあ、スジはイイんだ。あとは経験値と…お前に足りないのは集中力だ。」
うっ…イタイ所を…確かに自分は集中力にかけているときが多々ある。さすがオスカー様だっハハッ!
そして剣を鞘に戻しながら…
「…フ、まだまだだな、坊やは…」
……!!!!そんな甘い声で囁かないで下さい!
「もうっ坊やって呼ぶの止めて下さい!オスカー様!!」
いや、むしろ呼んで下さい…(オイオイ、大丈夫か乱ディ野郎!!)
そしてその余裕の微笑み!
オレは…貴方のうっすら細められたアイスブルーの瞳に、 固く結ばれた口元が紐解かれるようにフッと緩む口元に、めったにお目にかかれない首筋に!
目が釘付けでしたよ、オスカー様…
口に出したとたんに家宝の剣が飛んできそうなので胸の内に秘めてオスカー様を見送った。
「聞いてますか?アリオスさん!!」
「ああ〜?…聴こえてるっての。」
「それでですねっ去りぎわにオスカー様から甘い香りが…(悦)」
「あ、ねーちゃん、枝豆追加。あとビールもージョッキでな」
「ちょっと…聴いてますかアリオスさん!!」
バンッ!!オレはコーラ片手に勢いあまって机を叩いてしまった。
「あ〜?お前も飲みモノ追加か〜?チッしょーがねーな…酒はダメだかんな。バレタ日にゃアイツが馬鹿みたいに怒り出すからな。クッ」
「でもなんだかうれしそうですよアリオスさん。それに追加なんていりません!」
「アイツはなんだかんだで真面目なトコあるからな〜で、意外にカワイイトコあったりして…v」
(聴いちゃいねえ!!)「だからですねえっ!!」
「あ〜ったく!っせえな〜…あの無自覚誘い受け男の炎の守護聖サマのことだろう?わ〜ってるよ!アイツにはオレも苦労してるんだ。クッこのオレが…だぜ?」
残ったビールをグイッと飲み干しどこか遠い目をしながらアリオスはつぶやいた。
「しかしアレはクルよな〜〜〜〜!!アイツの色気は何なんだ一体…」
「ハア…直球です。」
「でもお前は毎日一番近くであの無自覚攻撃をくらってるわけだよな…そりゃつれ〜な〜ハッ」
「ええもう、辛いです。」ちょっと涙目になってきた。
「…クッ若いね〜『坊や』はっ!」あえて坊やを強調して言ってきた。
「オスカー様以外に言われるとほんっとうに腹たちますね…ええまだ若いんで!きっとオスカー様を満足させられると思いますねっ!」
「ああ〜ん?聞き捨てならねえなあ…お前みたいなお子様は所詮弟どまりで本気に相手なんかしね〜よっ! このオレのオトコの色気とテクでもって悦ぶこと間違いないな!」自信満々にアリオスは言う。
「な…っ!!そんなことはさせません!絶対に !そんなこと言ってるから逆に警戒心バリバリでオスカー様に逃げられるんですよ…」普段のランディからは想像できないような黒い微笑みがかいまみれた
「その点お前は弟ぶってスキあらばって魂胆だな…?ハッアイツは年下に甘いからなっ だが所詮お子様扱いにすぎねえな〜オレ達みたいなオトナな関係vにはほど遠いぜっ」
ギラリ、と長めの前髪から覗くオッドアイが光った。…とその時…
「だ〜れ〜がー何時何処で!どんな関係結んだってんだっ!!」
「オスカーv」「オスカー様っv」
「はあああ〜〜〜…坊やが誤解するだろう!あんまり妙なコト吹き込むなよ!」
「ひでえな〜オスカー!なかったことにする気かよ〜」
「当たり前だ!アレはノーカウントだ!」
「生憎だがオスカー、オレは忘れてやる気はないんでねっ」
「たかだか酔った勢いでキスした位だろっ」
「ディープにな♪」
「ッ…!それはお前が…!!」
「……オースカー様〜〜〜?…」
『し、しまった〜〜!!うっかり怒りにまかせてあんまり坊やには聞かせたくない話を…!』
「いやっ違うんだランディ…」
なんだかオスカー様が必死に何か言っていたがもうオレには聴こえてなかった…
「オスカー様、ズルイです…!」
もう理性を抑えられずに朝から目が離せずにいたオスカー様の首筋に食い付いた。
「…っ痛っ!」
そう、まさに"噛み付いた"のである。
「こらこら〜ランディ君?それじゃ歯形がくっきりだぜ?キスマークはこうつけんの!」
シャツをたくしあげていたためひきしまった腕が露になっている。
「…んっ…」
素早くアリオスは吸い付いてみせた。最後にチロっと痕をひと舐めすることも忘れずに。
「お〜ま〜え〜ら〜!!!!」
怒りと気恥ずかしさで顔を赤くしたままアイスブルーの瞳が怒気を露にして見据えてきた。
(そんな表情もそそられるんだよな〜…vv)
(今日は負けませんよ!オスカー様!…ああっ夢にまでみたオスカー様のうなじ…vv)
が目の前の2人にはある意味逆効果であった…。
「お取り込み中悪いんだけど。ここがセレスティア内にあるファミレスで日の曜日の真っ昼間ってこと忘れてないかい?」
クスッと声をたてて笑う人物そこにあり…嫌味な笑い、見覚えのあるおかっぱ頭…
「げっセイラン!!?」
「ずいぶんおっきな犬に噛まれたもんだね。しかも二匹…。モテモテだね、オスカー様♪クス…」
顎に手をおいて彼独得の人の悪い微笑みをうかべている。
「………うわあ〜〜〜!!!」
みるみる内に顔が真っ赤になっていくオスカーを見て「本気で忘れていたみたいだね…」 そっとつぶやいた。
とりえあえず常識人オスカーは、2人をキッ!と睨んで「お代はちゃんと払っていけよ!ウウェイトレスのお嬢ちゃんが悲しむからな…」とだけ残して走り去ってしまった。
今更かっこつけてもムダだと思うのだが…
残された狂犬ニ匹はというと…未だに悦っていた…。
そんな2人を横目に自宅へ帰る中セイランはおもむろに携帯電話を取り出した。
発信先は神鳥の宇宙にお住いの水の館。
「ええ、先ほどいいもの見させていただきまして…クス。おかげで次の新刊のテーマが決まりましたよ!じゃあ僕は執筆活動に入るから。挿し絵は頼みますよ、リュミエール様(微笑み)」
『まかせて下さい、セイラン(にっこり)。でもお相手がわたくし達じゃないのが気にくわないですが…』
「それは僕も同感だね、まあ今回はアリオスとランディ様に華をもたせてあげましょうよ。フフ… ああ、あと次の祭典の申し込み、オスカー様受で申し込んでおきましたから。」
なんの話をしておるのだそなた達!!
fin